なぜ学校はこんなにも幼くなったのか!? 福田和也著『なぜ日本人はかくも幼稚になったのか』を読んで考えた「公教育現場の現在」【西岡正樹】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

なぜ学校はこんなにも幼くなったのか!? 福田和也著『なぜ日本人はかくも幼稚になったのか』を読んで考えた「公教育現場の現在」【西岡正樹】

台湾南端の街『恆春』の城壁

 

◾️今、どれほどの教師が自分の教育理念を持っているのだろうか

 

 話を研究授業(初めの話)に戻そう。研究授業の子どもたちの様子を見ていると、教師が研究授業をどのように捉えているかが分かる。日々、教師は自分の教育理念の基に授業を考え実践しているのだが、その繰り返しを通して教師の理念や教師の大切にしている思いが子どもたちに浸透していく。教師の理念や思いが子どもたち伝わっていれば、研究授業においても子どもたちはなんとかその思いに応えようとするものなのだ。

 思うに、研究授業は教師にとって「肝心なこと」である。その肝心なことに真摯に向きあい、その姿を見てもらうということになると、緊張感はつきものだが「6年生の教室」にはそのようなあらたまったものが全く感じられなかった。教師からも子どもたちからも全く感じられないのだ。つまり、この教師が肝心なことから逃げているということに他ならない。このように肝心なことから逃げる教師の下で、子どもが幼く育つのは当然と言えば当然である。

 

 私は、クラスを担任している時、子どもたちに「幼稚」について話すことが度々ある。特に、低学年を担任した時には必ず「幼稚」について子どもたちに訊くのだが、ほとんどの子どもは

 「幼稚になるのはいやだ」

という。その理由は明確ではなくても「幼稚」という言葉から感じられる負のイメージを子どもたちなりに感じ取っているからだろう。

 そこで私は子どもたちに「幼稚」について次のように続ける。

 「みんなは『幼稚は嫌だ』と思っているようなので、幼稚ってどういうことなのか、先生が教えてあげるね。幼稚は次の3つのことから出来上がっています」

 

*お話を聴けない→お話が聴ける

*今何をやっているか分からない→今何をやっているか分かる

*みんなでできない→みんなでできる

 

次のページ「幼稚」とは「肝心なことに目をつぶること」「自己を顧みないこと」

KEYWORDS:

オススメ記事

西岡正樹

にしおか まさき

小学校教師

1976年立教大学卒、1977年玉川大学通信教育過程修了。1977年より2001年3月まで24年間、茅ヶ崎市内の小学校に教諭として勤務。退職後、2001年から世界バイク旅を始める。現在まで、世界65カ国約16万km走破。また、2022年3月まで国内滞在時、臨時教員として茅ヶ崎市内公立小学校に勤務する。
「旅を終えるといつも感じることは、自分がいかに逞しくないか、ということ。そして、いかに日常が大切か、ということだ。旅は教師としての自分も成長させていることを、実践を通して感じている」。
著書に『世界は僕の教室』(ノベル倶楽部)がある。
この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

福田和也コレクション2 なぜ日本人はかくも幼稚になったのか
福田和也コレクション2 なぜ日本人はかくも幼稚になったのか
  • 福田和也
  • 2025.09.19